編集と合成技術の進化
  • 映像技術
  • 2015-03-04

  • 今回は久しぶりに映像技術について書きたいと思います。

    実は先日、副業で合成の仕事を手伝いました。
    私の本来の仕事は主にプロデュース業務ですが、
    映像制作の中で合成作業が一番好きなので、
    実際の合成マンと言われる人の作業を見ていて
    自分も少しづつ参加することで、身に付けることが出来ました。

    この合成作業ですが、何が面白いかというと
    1.最後の仕上げの作業で絵のテイストを決められる
    2.すべての映像技術の知識を身に付けることが出来る
    3.現場での中心的な役目を担える

    1は
    バラバラの映像を一つにして色彩などを決める作業も含まれているので
    自分の思う色味にできるのが面白い作業です。
    2は
    最終合成ですから、映像の素材をすべて把握してないといけません。
    なのですべての映像の撮り方やCGの素材を把握し、
    撮影時には撮影の仕方を指示し、
    CG現場にもどういうCGを必要かを指示することになります。
    そういう意味ですべての映像技術を知りえるのです。
    3は
    2で述べたことが知識として身に付いているので
    現場のコントロールセンターみたいな立場になるからです。

    それではここで編集合成の進化を軽く述べたいと思います。

    私が業界に入った頃はまだフィルムが幅を利かしていましたが、
    87年頃からビデオの「ノンリニア編集」が登場します。

    まずリニア編集とは、簡単に言うと
    テープとテープを合成してテープに録画することです。
    これだと一々巻き戻して再生し、合成したり編集したりするので、
    時間もかかるし、出来上がったモノはダビングされたモノ、
    つまり「子供」になる訳です。
    当然、画質が落ちます。

    その画質と作業時間を画期的に向上させたのがノンリニア編集です。
    コンピュータが編集機器として使われるようになり、
    HDDなどに映像素材を入れ、編集や合成するときに(巻き戻しの必要なく)
    必要な映像素材を瞬時に出し入れすることが出来るようになったのです。

    そうです、今の編集・合成ソフトと同じことがやっとこの時代に登場したのです。
    しかし当時かなり高価なハード・ソフトウェアでした。

    私が初めてこのノンリニア編集に出会ったのはこのマシンです。

    QUANTEL製「Harry」
    harry02.png
    高価なので編集会社(ポストプロダクション)しか持っていませんでした。

    技術的には今のペイントソフトレベルの作業ですが、
    CMの秒数ほどの合成作業で1週間泊まり込みさせられた記憶があります。

    私達は完成まで後ろで見ていればよかったのですが、
    合成マンは数日の貫徹は当たり前の世界で大変だったと思います。

    それから本格的な合成編集技術が発展していきます。
    DISCREET 製のインフェルノ、フレーム
    QUANTEL製のヘンリー

    などが代表的なソフトの名前で、金額的には数千万から1億円でした。

    そして進化は続き、
    遂に個人でプロ級のソフトを使えるようになりました。
    flame,Premiere,Final Cut Pro などです。

    flameはフリーの合成マン達がよく使っています。
    Final Cut Proはディレクターが個人でMAC上で使っています。

    そして私がよく使うソフトがこれです。
    After Effects
    af01.jpg
    名称通り、編集より合成やエフェクトを映像にいれることに
    重きを置いているソフトです。

    このソフトに出会ったのは、私のアメリカ時代で95年頃です。
    まだ日本ではプロの現場でもあまり使われていない時に
    既にアメリカの現場では、合成編集専門の人が
    上級クリエイターとして存在していたのです。

    なぜ上級かは上で述べています。
    アメリカでは早くから重要性を感じていたのです。
    日本でも近年やっとディレクターの次に重要視されるクリエイターとなりました。

    学校などでは重要なクリエイターだとあまり教えていないようで、
    業界的にはいつも人材不足な職種です。


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    プリプロダクション その4
  • 映像技術
  • 2015-02-01

  • 前の記事でアニマティックの重要性を書きましたが、
    今回はこのシリーズのまとめになります。

    映画で予算のかかる部分は、
    撮影以外に背景などのセット造りがあります。

    これもアニマティックを作れば画面に映らないセットが分かるので、
    その部分を造る必要が無くなります。
    もし、アニマティックを作らなければ、
    セットは
    大目に造らなければなりません。

    スタッフ全員にとっても、
    どのような映像が必要かを事前に知ることは大きなメリットです。
    セッティングや段取りの前準備が出来るので
    当日に素早く対応できます。

    役者にとっても、
    どんな映像が出来るか知らぬまま演技することが無くなります。

    さらに投資者にとっても、
    「3.演技セリフ合わせ」と「4.アニマティック」を確認することで
    リスクを回避する段階的な投資が可能となるのです。

    この技法は大作映画だけでなく、恋愛ドラマ的な映画など
    どんな映画にも適用できます。

    そんな魔法の杖をなぜ日本映画業界は取り入れないのか。

    こころある製作者は何度も提案して来ました。
    しかし日本映画界には今までやってきたことを変えたくないという
    意識で満ち溢れています。


    日本人が効率をよくすることに長けているのは、
    「物づくり」をみれば明らかです。
    それが映画に関してだけは相変わらず感性だけで撮っています。

    日本の得意の分野をアメリカができて日本にできない訳はありません。

    私はプリプロダクションを重視したプロセスを
    構築しなければ日本映画を変えることは無理だと思います。

    投資者もこのプリプロダクションを条件にすれば
    失敗のリスクを減らすことが出来るのです。

    最後にアメリカ映画製作で感心したことがもう一つあります。

    ある映画の実行予算表を見せてもらったことがありました。
    この表が素晴らしくて、例えば一人の予定作業を3日から5日に変更すると
    映画予算
    総額に反映されるようにできていました。

    このような表を作れば、今ならクラウドで投資者もふくめ
    関係者の誰でもが、現在予算はどれぐらい使われているのか、
    どれぐらい赤字になっているのか、しかも何が予算を食っているのか、
    いつでも確認できます。

    そういうのも取り入れれば、映画製作が
    もっと「博打」では無くなり
    健全な製作が出来ると思うのです。

    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    プリプロダクション その3
  • 映像技術
  • 2015-02-01

  • いよいよプリプロダクションの生命線についてです。

    4.アニマティック
    matr01.jpg
    これはマトリックスのアニマティックです。

    絵コンテをもとに、今度は実際に「仮の映像」を作ります。
    基本はCG作業となりますが、人物の話すだけのシーンなどは
    「3.演技セリフ合わせ」の時に撮れた映像を流用します。
    そして映画の長さ(尺)の仮の映像が出来るのです。
    それがアニマティックです。

    私がCG屋だからいうのではありませんが、
    この作業こそ映画の失敗を回避し無駄な予算を使わないための
    論理的な方法だと思います。

    アニマティックの目的は
    ・実際のカメラで撮るアングルを決めること
    ・撮影現場でのカメラの位置と高さ、レンズを決めること
    ・ライトの方向や位置を決めること
    ・役者のセリフや演技(3で撮った)も入れ込むことで
     全部の尺や流れを決めること

    以上が目的なので、CGのクオリティは低くて問題ありません。
    CG作業の予算は出ますが少なくてすみます。

    しかも製作に入る前に重要なチェック機能与えてくれるのです。

    映画製作予算の大部分はこの後から発生するので
    その前に検証できるのは大きいのです。

    このアニマティックは完成する映画をシミュレーションしているので、
    これからの本番製作のガイドとなり、すべてのスタッフはこの映像に
    そって製作したり撮影のセッティングを行うことになります。

    アニマティックをやってない場合は
    ・撮影する現場に行ってからカメラや照明の位置を決める。
     これにはすごく時間がかかります。
    ・実際にカメラを回したり、照明をたいたりしてテストを行う。
     良く無ければ再度位置決めから行う。
    ・やっと役者が出てきて演技指導が入る

    これは非常に無駄です。膨大な予算の浪費です。

    アニマティックは撮影する現場の寸法や役者の身長を考慮した上で
    カメラのレンズが何mmかも決めて作られた映像です。
    したがって現場ではそのデータを再現するだけでよいのです。

    私がアニマティックの重要性を感じたのは下の映画です。
    dh02.jpg
    ダイ・ハード3(1995年)

    このシーンはCGではなく、実際に街の大通り(設定ではニューヨーク)
    で爆発させたカットです。
    撮影の時にはもちろん
    この大通りに一般の車は入れなくなります。
    流石に撮影に協力的なアメリカでも長い時間は許可がでませんでした。
    そこで製作スタッフはCGを使って徹底的にシミュレーションを行い、
    短時間でカメラや照明を設置し、一発勝負の撮影を成功させたのです。

    これがCGを使ったアニマティックの基礎になり、
    映画製作に非常に重要なヒントを与えてくれました。

    正式にCGのアニマティックを使用した作品は1年後に公開された
    「ミッション:インポッシブル」(1996年)だと言われています。

    このアニマティックを徹底的に活用すれば、スケジュールと予算を
    大幅に削減できるのは明らかです。
    しかも最初の段階で映画の善し悪しの検証もできます。


    まとめは次の記事で。


    テーマ : 映画関連ネタ
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    プリプロダクション その2
  • 映像技術
  • 2015-01-31

  • プリプロダクションについての続きです。
    前回は1.絵コンテについてお話ししました。

    2.背景やキャラクターのデザイン(衣装)
    sw01.jpg
    スターウォーズのデザインです。

    舞台となる場所や人物の衣装などは、製作に入る前にデザインし、
    みなで確認しておくべきです。

    至って普通の話のように聞こえますが、
    日本映画では直に製作にはいる場合があります。
    なぜかというと予算の割り当てがないので、
    既存のものを転用する場合が多いからです。

    つまりいくらデザインしても、結局はあるモノで対応するので
    デザインしても無駄となるわけです。

    SFモノなどは流石に新たにデザインし製作しないとまずいですが、
    時代劇や現代のモノは既存の衣装を利用したり、
    現代が舞台の時は実際に使っている事務所や部屋を利用します。
    時代物はそれ用の施設を利用することが多いです。

    これも予算が割り当てられれば、ある程度製作したり
    汚しをいれることが出来ます。


    3.演技セリフ合わせ

    撮影に入る前に役者達の演技やセリフを練習する場です。
    場所は倉庫や広い事務所、劇団の練習場所などです。
    あまりお金がかからないところで行うのが普通です。

    これは徹底的に行うべき作業です。

    この時点でしゃべり方や演技をチェックし、
    完璧に仕上げてから撮影にのぞむべきです。

    本番の撮影現場であれこれやるのは愚の骨頂です。
    無駄な時間を費やし無駄な費用もかかります。

    たとえ経験のない新人の監督を抜擢したとしても、
    この工程を踏めば演技指導の不安もなくなり、
    チェック機能も発生します。

    また、記録して映像に残せば、
    他のスタッフにもどのような演技かを事前に知らせることができ、
    撮影本番に初めて見るということがなくなり、
    セッティングを円滑に進めることができます。

    黒澤明監督がこの演技セリフ合わせに数か月を費やしたことがある、
    という記事を読んだことがあります。
    もちろん缶詰状態ではありませんが。

    4.アニマティック

    アニマティックについては次の記事で詳しく書きますが、
    このアニマティクこそ非常に重要なプリプロダクションだと
    思っています。


    日本映画でも1から3(絵コンテ、背景やキャラクターのデザイン、
    演技セリフ合わせ)は多かれ少なかれ準備し対応しています。
    でもこのアニマティックに対応しているものは、
    ほとんど見たことがありません

    アメリカではこの作業こそ生命線と考えている人が多いです。
    如何に重要かは次の記事に回します。


    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    プリプロダクション その1
  • 映像技術
  • 2015-01-30

  • それではプリプロダクションについて書いていきたいと思います。
    実は私はこのプリプロダクションこそが日本の映画を変えると
    確信しています。

    プリプロダクションとは何かを述べる前に
    以下の準備ができていることが前提となります。
    1.メインメンバーが決まっている(監督、脚本、カメラマン、主役など)
    2.脚本

    実は脚本に関しても以下のようなプロセスがあります。

    著名な脚本家は、よく映画1本につき3回の書き直しを含めた
    契約を行います。
    その条件でいくらということです。
    つまり、1回目の脚本を書いて、監督などが気に入らない場合は
    書き直しを行うわけです。
    それが3回までという感じです。

    実はこの作業に関してもプリプロダクション的な要素を入れると
    5回ぐらいは同じ予算で書き直しが可能です。

    つまり最初は大枠の脚本を書いてメインスタッフで議論し、
    OKなら次の細かいところを詰めるというやり方です。
    このやり方だと、皆で確認しながら進めることが出来るし、
    無駄な予算を使う必要がありません。

    そうやって出来上がった脚本から
    本格的なプリプロダクションの作業が開始されます。

    プリプロダクションには
    以下の4つの大枠があります。
    1.絵コンテ
    2.背景やキャラクターなどのデザイン(衣装)
    3.演技セリフ合わせ
    4.アニマティック

    1.絵コンテ

    conte01.jpg
    これはスターウォーズの絵コンテです。
    この絵コンテ作業にも取り入れるべき重要なプロセスがあります。

    絵コンテはそれを描く専門の方がいますので、
    実際に描くときにはその人に任せるのですが、
    どういう絵を描くのかはメインメンバーで決めなければなりません。

    この作業も共同でやります。
    はがき大の白紙にカットカットの絵をかいて
    掲示板のようなところに貼っていきます。
    それを皆で見ながら討議し、書き直したり貼り直したり、入れ替えたりします。
    参加するのはプロデューサや監督、カメラマンや脚本など
    この作品にかかわるメインのメンバーです。
    当然、皆が絵を描ける訳ではないので、
    ラフな絵で各自のアイデアを入れていくのです。
    大枠ですが、これでカメラの位置やストーリーの流れなどが決まります。

    この時点で、この作品の良し悪しの最初のチェック機能が発生します。
    しかも予算はメインメンバーの人件費だけです。

    それが出来たら絵コンテ屋に描いてもらいます。

    このような作業で一番重要なことは「後戻りしない」ということです。
    一旦、皆で決めたことを覆えしてはいけないのです。
    この前提を崩すとすべてが無に帰します。
    だから真剣に討議し、一つ一つ確認しながら詰めていくことが重要です。

    絵コンテを決める作業では、1~2週間は缶詰状態を覚悟しなければ
    なりません。

    ただ、なかなか結論が出ないシーンなどには時間をかけて討議する
    ケースもあります。
    その場合は製作に入らず、プリプロダクションで結論が出るまで止めておくのです。

    要はプロセスの手順を厳守するということで、
    プリプロダクションが終わらないと製作に入らない、です。

    つづきは次回へ


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    プロフィール

     野口秀昭

    Author: 野口秀昭
    30年近くCG映像業界に身を
    置き、CM、展博、ゲームなど
    の映像を担当し受賞作品や
    有名タイトルを多数制作

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