黒澤作品影武者
  • 名作紹介
  • 2014-12-27

  • 今回は黒澤作品の紹介です。第一弾は「影武者」です。

    公開   1980年
    製作費  約10億円
    興行収入 約27億円
    プロデューサー    田中友幸(ゴジラ)
    海外プロデューサー フランシス・フォード・コッポラ(ゴットファーザー)
                  ジョージ・ルーカス(スターウォーズ)
    kage.jpeg
    80年の公開ですから、当然CG技術等はありません。
    黒澤作品はいろいろな人が批評していますが、世界に認められた監督
    であるということは誰も疑わないでしょう。

    私が黒澤作品で一番魅了されるのは「カメラ」です。
    カメラアングルのどこにも「隙」がないのです。
    そこがすごいと思っています。

    それでは詳しく見ていきましょう。

    初っ端からこのシーンです。
    images03.jpeg
    約6分の固定カメラのシーンです。
    しかも一人二役ですから2回撮っているということになります。
    うまく合成していますが、そんなことより、
    撮影現場の緊張感は半端なかった
    と思います。

    なにしろ、6分のフィルムを回しているので、一つでもミスすると6分のフィルムが
    パアになるのです。(フィルム費が半端ないですから)

    このシーンの真正面のカメラ位置も本当に勇気がいります。
    よぽど自信がないと置けない位置です。

    黒澤監督はすべてのカットのカメラ位置を綿密に計算しているとしか
    思えません。
    images01.jpeg
    丘の向こうから現れる信玄軍のシーンです。
    夕焼けの空が大きく広がっています。
    こういうアングルは本当にしびれます。
    しかもいい雲です。何日も待っていたのでしょう。
    images02.jpeg
    監督のアングルに
    よくある構図です。
    手前と奥と夕日のバランスが素晴らしい。
    images04.jpeg
    馬の激走のシーンです。
    地面に起伏があるので、奥から激走してくる馬が一旦隠れて見えなくなり、
    手前でまた出てくるという見せ方が素晴らしい。
    馬の数も数百頭が登場します。

    実は以前ゲームムービー制作時によく参考にしました。
    公開から数十年たつ今になっても学ぶべきところが沢山あるのです。

    一番印象的なシーンは、戦場で敵が信玄本陣に奇襲したときに
    本陣の陣営をみて引き返すシーンです。
    整然と配置した陣営を固定カメラで見せているだけで
    敵を諦めさせた演出がすごいのです。
    普通は固定カメラだけで表現できません。

    すべてに置いて奥行を意識したカメラアングルを重用しています。
    一つ一つ検証していきたいのですが、そうもいきませんので
    皆さんが見る時にそういう視点から見るというのも面白いと思います。

    内容についてはもうすでにいろいろと言い尽くされているので、私から敢えて
    いうことはありません。

    私の映画アウトリストではよく衣装やメイクの指摘をしますが、
    「影武者」ではどうでしょう?

    image06.jpeg
    どうです、ここまで馴染んだ兜をかぶった武将をみたことありますか。
    しかもカッコいい!

    キャスティングでももちろん素晴らしい俳優陣をつかっています。
    その中でも、ここまで信長像に近い俳優を今だにみたことがありません。
    隆大介さんという俳優です。
    しかも演技の本気度が半端ないです。
    nobu.jpeg
    また、この作品では小姓役など広く一般からオーディションで選ばれ、
    素人でも結構セリフをもらえたことなども話題になりました。

    撮影場所に姫路城や熊本城をつかえたのも黒澤だからでしょう。

    ここまで拘り、スケールのある映画を撮れるのは、日本においては
    黒澤明しかいません。
    今後、彼を超す人材が生まれるかどうか。

    黒澤の記事です。
    「私は海外にいくとスター扱いだが、日本では乞食あつかいを受ける」
    「世界の黒澤」さえこのありさまです。他はいうべくもありません。

    最後にこの作品にも残念な点はあります。
    予算の問題もあったと思いますが、林軍が少ない印象と
    ひとカットが長い点です。
    特に「悪夢のシーン」と「屍シーン」で、時代によって好まれるテンポは
    変わるとは思いますがとにかく長いです。

    それでも時代物の映画でこの影武者に匹敵するのは他の黒澤作品だけです。


    テーマ : 映画レビュー
    ジャンル : 映画

    CG制作マシーンの流れ
  • 映像技術
  • 2014-12-23
  •  
    今回はCG制作で使用したマシーン(あえてコンピュータと言わずにマシーンと
    いいます)について書いていきたいと思います。

    その前に、私が学生時代
    個人的に使用したコンピュータの紹介から入ります。
    初めて私が手にしたコンピュータはこれです。
    SHARP MZ
    mz.jpg
    横にあるカセットは音楽用ではなく、データを記録する装置です。
    そう、音楽用カセットテープで記録するのです。
    この記録したカセットテープをラジカセで再生すると、
    「ピー、ピロピロ~」といいます。
    FAXと同じですね。びっくりです。

    ちなみに最初に組んだ
    プログラムは数学の「SINカーブ」でした。

    次に購入したのはNEC9801F2で、隣は姉妹機の88シリーズです。
    PC-9801F2.jpg  pc8801.jpeg
    当時、約30万円で長期ローンで買いました。
    懐かしいです。感慨深いものがあります。

    それではCG制作の現場で使用したマシーンの紹介に入りましょう。

    私が入社した会社には自社開発のハードとソフトがありました。
    ハードは、1CPUで計算するよりたくさんのCPUで計算した方が
    早いのではという発想から開発されたもので、マシーンルームには
    300近いCPUがボードむき出しの状態で、ラックにずらりと並んで
    いました。
    そこは極寒で、天井にある
    何本ものダクトから「ゴォォ~」っと
    冷房の風が吹き出していて圧巻でした。
    約十数億円の設備です。

    当時はマシーン一つひとつに擬人化した名前をつけていました。
    またよく落ちて(リスタート)いたので、マシーンの上に
    神棚を置いて、日々拝んでいたものです。

    そのほか市場から購入していたマシーンがこれです。
    250px-Robotron_K1840_2.jpg
    VAXといいます。これも1億円以上はします。

    それ以外に、当時コンピュータ分野で知られて無かったSONYの
    「NEWSシリーズ」もありました。
    このマシーンはCPUは低いながらも作業画面をマルチで出せた気がします。
    news_nws800.gif 
    今の人には理解できないと思いますが、当時はまだディスプレイに絵を
    出すことが出来なかったので、当時のスタッフは数字で色や質感を

    表現していました。

    内部打合わせでは数字が飛び交い、今にして思うとおもしろい時代でした。

    そして80年代の後半、ついにCG業界を一変させるマシーンが
    登場します。

    シリコングラフィックス製のマシーンです。
    SGI.jpg Indigo.gif
    このマシーンの素晴らしいところは、ディスプレイに絵をだして作業が
    出来るようになったことです。
    当時は驚愕の性能でした。
    CPUの性能もありますが、グラフィックボードの開発が大きく
    影響していたと思います。
    値段も数百万から数千万円になりました。

    ここからシリコングラフィックスが世界のCG業界を独占していったのです。
    「シリコングラフィックス製を使わざる者はCG業界にあらず」です。
    ちなみに、「ソニー製を使わざる者は映像業界にあらず」もありました。
    そういう時代です。

    ちなみに、これが当時のスーパーマシーンです。
    cray.jpeg
    Crayです。一度、つかったことがありますが、すごく早かったです。

    さて永遠につづくと思えたシリコングラフィックス王国もついに終焉を
    迎えるときが90年代後半に来ます。

    WINDOWSのパーソナルコンピュータがCG業界に入り込んできたのです。

    私もギリギリまで「抵抗」しました。
    パソコンにできるものかと思っていたのです。
    それがこのPCを使ったことで一変しました。

    INTERGRAPH製のTDZシリーズです。
    images603935.jpg
    当時は4CPU搭載のすごく早い「PC」でした。
    この時からシリコングラフィックス製からWINDOWS PCに移行して
    いくことになりました。

    今は擬人化した名前をつけることもなくなり、番号だけの
    名前になりました。

    そして「マシーン」ではなく「PC」と呼ぶようになりました。


    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    るろうに剣心 京都大火編
  • 映画批評
  • 2014-12-20

  • 「るろうに剣心 京都大火編」です。
    るろうに剣心はご存じ漫画からの実写映画化です。




    漫画・アニメの実写映画化は往々にしてコケます。
    というか成功例をみたことがありません。

    ハリウッド映画は結構成功している例があるんですが・・

    理由はいろいろとありますが、漫画・アニメキャラを実写にかえると
    イメージがおおきくかけ離れるからだと思います。
    もちろん製作側の力量も大きいのですが。

    Wikipediaを見ますと
    製作費   30億
    興行収入  52億+42億

    前後編の2部作を同時に撮影したことは上手いやり方です。
    おかげで興行収入もトータル的には今年の邦画の実質第一位になります。
    この作品はアジアでは非常に人気で、そういう意味でも成功した作品となりました。

    大友啓史監督を私が知ったのはNHKの「竜馬伝」です。
    もともとNHK職員の方でドラマ監督としてデビューし独立した人らしいです。
    「竜馬伝」で一緒に仕事をした佐藤健を起用し、この映画を作ったようです。

    後日、ドラマ批評として大河ドラマについて話していきますが、「竜馬伝」に
    ついて少し感想を述べます。
    大河ドラマにリアル性を入れ込んだ演出で良い作品だったとは思います。

    特に佐藤健は光っていた気がします。
    「汚れ役」が演じられる若い役者は非常に少ないのです。

    そういう意味でも監督はこの俳優を採用したのでしょう。

    それでは批評して行きましょう。
    1.カメラに変なアングルは無かった
    2.映像もふつうのシーンと戦うシーンの色彩をかえることもやっています。
    3.ライトも問題なかったです。
    4.衣装も当時の材質を採用し、汚れも入れています。
    5.メイクも汚しをいれています。佐藤健の眉毛が少々気になりましたが、
      これは原作キャラのイメージを重視したということにしておきます。

    良い点です。

    1.映像技術を十分に理解し使用しています。
      実際にセットを造るところとCGで表現するところを理解した製作を行っています。
      やたらとCGを表に出す作品がありますが、CG製作側としても「うざく」感じます。
      そういうところが無く素直に映像を楽しめました。
    2.スピード感と吊り技術では日本では第一人者でしょう。
    3.俳優陣も原作キャラに近いキャスティングで違和感を感じません。
      ただ師匠だけは「竜馬伝」を引きずりすぎです。
    4.この規模(エキストラの多さ、セットの規模、CG技術の活用など)を
      やっと邦画もできようになったことは良い傾向だと思います。

    悪い点です。

    実は見当たらないのですが、
    題材が漫画からきているので、こういう演技やこういう演出をあえて
    しているのであって、リアル思考から見て判断できないというのが本音です。

    大友監督には次は是非世界に通用するスケールの大きいリアルな作品に
    挑戦してほしいと思います。

    とりあえず、やっと漫画・アニメを実写化して成功した邦画映画を見れました。

    テーマ : 映画レビュー
    ジャンル : 映画

    後世に残すべき不朽の名作 その1
  • 名作紹介
  • 2014-12-20

  • 後世に残すべき不朽の名作を紹介したく、新しく名作紹介のカテゴリーを追加しました。
    記念の第1作目は私達の映像業界で働く者にとって「神」のレベルの作品です。

    「2001年宇宙の旅」

    監督   スタンリー・キューブリック
    公開日  1968年



    この時代の背景を少し説明します。
    当時アメリカではベトナム戦争が泥沼化していて、ロバート・ケネディー上院議員が
    兄と同じように暗殺されるというアメリカの負の時代。
    しかし翌年には人類初の月面着陸という明るい出来事もありました。

    今の若い人には歴史教科書の中でしか知らない時代でしょう。
    そういう時代に製作された映画です。

    この時代には当然CGはありません。
    デジタル合成もありません。
    フィルムとフィルムをあわせる合成しか出来ない時代です。
    コックピットの中でCGっぽい表現がありますが、これは線を一枚ずつ
    描いて着色したものです。

    この作品は映像技術を補うために撮影技術を駆使しています。
    しかも驚異的な技法がふんだんにあります。

    ストーリーを話しましょう。
    猿人の時代、猿の群れの中に忽然と現れる黒い石板(モノリス)。
    ある猿が勇気を出して石板に触ると骨を武器にできることに気付く。
    そこから時代がとび、2001年。
    400万年前から埋まっている黒い石板(モノリス)が月で発見される。
    石板(モノリス)が木星に信号を送っていることがわかり、
    木星へと調査船が送られる。
    木星に近づくと、調査船を制御する史上最高の人口知能コンピュータ
    「HAL」が感情をもち始める・・・

    「未知のモノ」との遭遇というテーマはえてして陳腐になりがちですが、
    超リアルな演出と荘厳な音楽を入れ込んだことで芸術の域に達しています。

    音もすばらしいです。
    重要なシーンではクラシック音楽をながしていますが、ほかでは全く音楽はなく
    周りの音のみで、宇宙空間は耳が「キーン」となるほど無音です。
    そのバランスが秀逸です。

    映像はリアル性を重視しています。
    単にリアルといいますが、無重力の表現は私達専門家から見ても驚異的な
    仕掛けで撮影されています。
    その技法は今でも参考になるほどです。

    例えば、
    宙にふわふわと浮いているペンを、奥からスチュワーデスが近づいて
    手に取る場面。

    この場面では一度もカメラが切り替わっていません。
    つまり同時に撮影しているのです。
    なんども言いますがCGの無い時代です。

    どうやって撮ったか、考えてしまいます。
    おそらく無反射ガラスをつかった技法だと思いますが、
    それでも綿密な計算がなければ上手く行きません。
    そういう場面が各シーンに出てくるのです。

    デザインも非常に素晴らしく、宇宙船などもリアル性が重視されたデザインで、
    本当に開発されているのではと思えます。

    なかでも一番の衝撃をうけたのは、やはり石板のモノリスです。
    唐突な話ですが、数学の世界で「神の数式」はシンプルでなければならないと
    言われています。
    まさにこのモノリスです。

    そして、この作品のもっとも素晴らしいところ、それは製作者の「Mind」です。
    日本語では当てはまらないのですが、姿勢とか精神とかの意味です。

    アメリカのこの激動の時代だからこそ、撮影不可能な表現に挑戦し、
    人類にとっての「進化」を表現する、そのMindが素晴らしいと思います。

    私達、映像に携わっている人々は襟をただし正座してみるべき名作です。

    最後に、皆さんが映像をみたら地球の表現が陳腐で、月はクオリティーが
    高いと気づくと思います。
    当然です。
    この時代に外から地球を撮影したものはほとんどなく、
    逆に月面着陸計画中ですから、月の情報はたくさんあったのです。

    そういった時代が見えてくるところも面白いですね。

    テーマ : 映画感想
    ジャンル : 映画

    納品形態のながれ(CM編)
  • 映像技術
  • 2014-12-16

  • *ここで述べる技術は一般の方にわかりやすくするためにシンプルに書いています。

    最近、若い人がVHSテープをしらないという衝撃なことがありました。
    「ベータというのがあってな」という話ができなくなり、さびしいかぎりです。

    前の記事で「CGもフイルム納品」と書きました。
    読んだ人からどういうこと?との反応がありましたので、今回は納品形態の
    ながれを書きたいと思います。

    80年代の半ば、主にCMはフイルムで納品していました。
    当然、私達のCGもフィルムに変換して納品しなければなりません。

    CGの納品は以下のプロセスでフィルムにします。
    1.CGで一枚づつ絵を描いて、24枚たまったらオープンリールに
      データとして記録します。
      ちなみに「24枚」はフィルムで1秒分です。
    オープンテープ
    2.そのテープを「フィルムレコーディング」という機械にかけます。
      デジタルデータを読みこんで、一枚ずつ、レーザーで
      フィルムに焼き付けていく時間のかかる工程です。
    3.出来上がったフィルムネガを現像に回します。

    したがって、私達がその完成形を初めて見るのは試写室になります。
    試写にはスポンサーから代理店、制作会社、監督と勢揃いしています。
    私はその頃まだ下っ端でしたので、試写室の出口の近くの椅子に
    座っていました。
    それには2つの理由があります。

    1.ミスがあったら思うと怖くて奥の席に座れなかった。
    2.ミスが分かったら、すぐに走って現像やフィルムレコーディング担当者の
    スケジュールを押さえるため。

    正直、試写の映像をまともに見れず、いつも俯いていました。
    試写が始まると、誰かが「あっ」と言うのです。
    その「あっ」の一言で1週間帰れないことが決まります。
    そして多くの担当者が泊まり込みになるのです。
    だから、今でも「あっ」がトラウマになり、その声をきくと無意識に心臓が「ドキッ」
    とします。
    それぐらい胃の痛いのが試写でした。

    そんな時代が終わり、ついにフィルムからビデオテープになり、
    1インチテープというものが納品形態になりました。
    1インチ機
    これでCGデータ-から直接ビデオテープに収録できるようになりました。
    クライアントに見せる前に、上のモニターで自分ひとりでも確認できます。
    それで問題があったらCGスタッフのみにそっと言えるので、気が楽です。
    泊まり込みになるのは変わりませんが。

    ちなみに、チェック時に良く使われるのは以下のテープです。
    U-matic.jpgu-maticデッキ
    正式にはU-Maticといいますが、日本では4分3といいます。
    要は3/4インチのテープのことです。

    このテープには専用の編集機があり、映像に合わせて音を入れたり、
    カットつなぎなどが簡単に出来ます。
    私もさんざんやりました。
    このテープは便利だったために最近まで使用している会社もありました。

    このテープでチェックし、関係者が持ち帰るためにVHSテープにコピーします。
    多いときには10本ぐらい用意しました。

    次にBETACAMになり更にコンパクトになりました。
    betacam.jpg
    そしてD-1テープになり
    d-1.jpeg
    ついにデータの状態でハードディスクやインターネットをつかって、
    直接、納品できるようになりました。

    今では関係者が集まることも無く、各自が別な場所でネット上のデータを
    共有しチェックすることも珍しくありません。

    関係者と会わずに終わった仕事もよくあります。

    すごい進化です。

    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    映写機の進化
  • 映像技術
  • 2014-12-14
  •  
    *ここで述べる技術は一般の方に分かりやすくするためにシンプルに書いています。

    最近は映写機を知らない若い人が映像業界に入って来るようになりました。
    さびしい話です。
    そのためにもあえて記事にしていきたいと思います。

    映写機とはフィルムをスクリーンに投影する機械です。
    映写機01 
    フィルムの種類はいろいろとあり、以下が代表的なサイズです。
    film.jpg  
    そのサイズに合わせて当然、映写機もいろいろとあります。

    映写機やフィルムが大きく動き出したのは80年代だと思います。
    その時期は博覧会などが頻繁に開催され映像技術が大きく発展しました。
    私がちょうどその時期に業界に入れたのは幸運だったと思います。

    当時のフィルムは35mmが一般的でした。
    上の右端がそうです。
    真ん中の四角い中に絵が入り、この絵を1秒の間に24コマ「送り出す」ことが
    映写機の最大の役目です。

    その絵を強いライトでスクリーンに映すと観客は動画を楽しむことができます。

    35mm4pの4pとは横に穴が4つあるということです。
    この穴に映写機の中にある「爪」をひっかけて1秒間に24コマ送り出すのです。

    重いロールを
    引っ張るので穴には強い力がかかり、フイルムが「切れる」ことが
    頻繁に起きました。
    そのため、35mmは切れたフイルムをセロハンテープでつなげて
    再生できます。
    映画館のスタッフがおこなえて経済的です。
    私もよくやらされました。
    当時はCGもフィルム納品だったためです。

    技術は進化します。
    より画質の良い映像が求められるようになり、70mmが一般的になってきました。
    絵の入るところが大きくなり、ライトも強くなり、スクリーンもより反射率が
    よい材質が用いられるようになりました。

    この70mmは35mmと違って非常に肉厚で丈夫に作られていますが、
    実は良い面ばかりではありません。

    私は、70mmの20分の長さのロールを車のトランクに入れ、
    首都高を走った経験があります。
    そのときには非常に危険を感じました。
    トランクの重さで車の前輪が持ち上がったのです。
    それぐらい重いのです。

    また、35mmがこわれると「ぐちゃ」と言う感じになりますが、
    70mmはまるでガラスみたいに割れます。

    これは大きな問題です。
    映写機で一番の高価なものはレンズです。
    このレンズに70mmの破片があたると、大変な損害をうけます。

    そのため新しい技術が開発されました。

    縦に送り出すとフィルムに力がかかるので、横に送り出す方法、
    それがIMAXです。画質も格段にアップしました。
    映写機02 
    そして終に完成形が出来上がってきたのです。

    私が見て感動したのは「爪」で送りだすのでは無く、気圧で送り出すシステムです。
    技術者に説明をうけたときの感動を
    今でも覚えています。
    これでフィルムが壊れることはほぼ無くなりました。

    この進化がほとんど80年代のうちに行われたのです。

    ちなみに、70mmはセロハンテープでのつなぎは出来ません。
    ひっぱる力が余りにも大きいので耐えられないのです。
    そこで70mmはつなぎ目をレーザーで焼いてつなげます。
    実はこれも私は経験しました。
    セロハンテープと違ってやり直しがきかないので非常に緊張した作業でした。

    このように映像技術はスクリーンの裏で進化してきたのです。
    詳しくかくと書ききれなくなりますので、大まかな流れでした。

    今はほとんどデジタル化して、このような「機械」を見ることが無くなりました。
    デジタル側として代表的な立場にいる者ですが、さびしいものです。

    今後、スクリーンの進化や立体映像についても記事にしていきたいと
    思っています。
    お楽しみに。


    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    映画の善し悪しを見分ける その2
  • 映画批評
  • 2014-12-10

  • 「イマジナリーラインを守っていない」
    まず、イマジナリーラインとはどういう事かをお話します。

    上から見たの立ち位置です。
    シャーク&シュモク01_s

    シャークトパス君(赤)を見るカメラ    シュモクラーケン君(グレー)を見るカメラ
    カメラ01_s   カメラ02_s

    それでは彼らのおしゃべりです。
    シャークトパス01_1_s     シュモクラーケン01_2_s
    セリフは下品ですが、互いにやり取りしているのは分かりますね。
     
    ところが、シャークトパス君のカメラの位置を変えて
    カメラ03_s

    彼らのおしゃべりをもう一度、見てみると・・・
    シャークトパス02_1_s  シュモクラーケン01_2_s
    あれ、こいつら誰に言っているの?ですね。
    カメラの位置を変えるだけで見る人が混乱してしまいます。

    つまり、このシャークトパス君にとって緑の線を「イマジナリーライン」といい、
    シャーク&シュモク01_1_s
    このラインをカメラがまたぐと彼の位置が逆に見えるのです。
     
    こんなことがあるんだと思うかもしれませんが、本当によくあります。
    映画製作者は、映像を使って見る人にその場面を説明しなければなりません。
    それを怠り、無視する事は映画人としての使命を放棄しているのです。

    私が今までに実際にあったイマジナリーラインを無視した映像監督の言葉です。

    「そんなの古いよ カッコいいカメラワークがいいじゃん」
       (いやいや、そういう問題じゃないのでは?)

    「え、イマジナリーラインってなに?」
       (・・・苦笑)

    先日、NHKでディズニーのアニメ監督のドキュメンタリーを放映していましたが、
    その中で、何回も何回も演出を検討しているシーンがありました。
    それはどうしたらシチュエーションを見る人に分かってもらえるかでした。

    製作者はこうあって欲しいですね。

    テーマ : 映画レビュー
    ジャンル : 映画

    映画の善し悪しを見分ける その1
  • 映画批評
  • 2014-12-10

  • 今日はその映画に観る価値があるかどうかを簡単に見分ける方法です。
    これは予算の問題では無く、製作側の映画に対する姿勢の問題だと思って下さい。

    以下のリストに適合したら、映画として問題があります。。

    1.イマジナリーラインを守っていない。
    2.カラコレしていない。(色身調整)
    3.ライティングが光の方向性を気にしていない。
    4.衣装にアイロンがかかっている。
    5.役者がいつもの手入れされた髪型や眉毛などで出演している。

    1は少し説明がいるので次の記事で述べます。

    3.ライティングが光の方向性を気にしていない。
     光は太陽、月明かり、電灯、ロウソクなど場面造りとして欠かせないアイテムです。
     それを無視してライトをあてている映画を良くみかけます。
     臨場感がまったく感じません。スタジオで撮影しているようなモノです。

     これは照明や記録がチェックしていないのか、監督の指示なのか分かりませんが、
     予算の問題では無く、「こんなんで良いだろう」的ないい加減さです。
     そういうところを気にしていない映画は全てにいい加減です。
     つまり映画として見る価値が無いと言う事です。

    4.衣装にアイロンがかかっている。
     よく映画を見る人でしたら覚えがあると思います。
     現代でも昔の設定でも、登場人物がアイロンがかかった衣装ででてくると
     本当にがっかりします。
     それ、撮影寸前に着たでしょと言いたくなります。

     あの黒澤明監督は、役者に撮影に入る1週間前に衣装を渡し、ずっと着てろと
     言ったそうです。役者と衣装は一体でなければなりません。

     こんな事も理解できていない製作側が良い作品を作れるはずがありません。
     だから観る価値が無い映画なのです。

    5.役者がいつもの手入れされた髪や眉毛などで出演している。
     いくらタレント事務所が強いからといっても製作側も少しは注意しても良いのでは?
     言えない監督ですから、演技についても何も言えません。
     当然、役者?の演技が棒読み、一本調子になり、まるで臨場感が無くなります。

     私から言わせると映画のカテゴリーに入れるなと言いたいです。


    以上、1は少し説明が必要なので次回にまわします。

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    ジャンル : 映画

    モーションコントロールカメラとは
  • 映像技術
  • 2014-12-10

  • 今回は、ちょっと息抜きで、モーションコントロールカメラについてお話しましょう。
    モーションコントロールカメラとは、カメラの動きをコンピューターで制御するモノです。

    つまり、
    カメラが同じ動きを数ミリも違わずに何度も再現できるので、
    合成が必要なときに撮影現場で使用されます。

    私が見て感動したモノはこれです。先端にカメラがついています。

    mairo.jpeg

    「マイロ」といいます。手作りの日本製です。
    このマシーンは、あえてマシーンといいますが
    恐竜みたいな恰好で(音もすごいのですが)、なんかゴッツイ。

    2000年頃に開発されたもので、画期的な技術をもっていました。

    CGのカメラの動き ⇒ マイロで撮影現場で再現
    撮影現場でマイロで撮影したカメラの動き ⇒ CGで再現

    なんのことか判らない人もいると思いますが、これは凄い事だったのです。
    モーションコントロールカメラ開発に人生をかけた技術者も居ます。

    その人から教えてもらったのですが、何が一番、大変かというと
    「動き出す」「止まる」の時に、どうしても数ミリ揺れてしまうのをゼロにすることだ
    と言っていました。
    だから、こんな姿になったのですね。

    撮影時には止まったり、動き出したり、回転したり凄い動きをします。
    技術者の苦労が染みついているマシーンです。


    次の映像技術はフィルム映写機の進化について記事にしたいと思います。
    お楽しみに

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    プロフィール

     野口秀昭

    Author: 野口秀昭
    30年近くCG映像業界に身を
    置き、CM、展博、ゲームなど
    の映像を担当し受賞作品や
    有名タイトルを多数制作

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