激突~映画とドラマの境界線~
  • 映画紹介
  • 2015-02-14

  • 今回は映画とドラマの境界線について書きたいと思います。
    私はよく邦画を映画かドラマかで批評してきましたが、
    それでは映画とドラマの境界線は何か。
    よい例となる「映画」があります。

    激突
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    公開    1971年
    製作費 約5千万円
    監督   スティーブン・スピルバーグ

    この作品はスティーブン・スピルバーグがまだ無名のときに作った映画で
    彼の実質的なデビュー作品となりました。

    内容は、アメリカのセールスマンが車でハイウェイを移動中に
    大型タンクローリーを追い越したことで、
    このタンクローリーにしつこく命を狙われるという短編小説の映画化です。

    この作品は登場人物が少なく、殆どがタンクローリーと主人公と彼の車のみで、
    背景も広大なハイウェイだけです。
    タンクローリーの運転手は画面には登場しません。
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    したがって製作費だけを見るとドラマレベルですが、
    カメラをローアングルで見せているだけで、
    すごい勢いで迫ってくるタンクローリーの恐怖感を与えたり、
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    タンクローリーの運転手を最後まで見せない演出をすることで、
    人とタンクローリーという怪物との戦いとなり、絶望感をも表現しています。
    gekitotu04.png
    しかも広大なハイウェイでのカーチェイスでスケール感もあります。

    つまりカメラアングルやスケール感とスピード感、
    そして不気味さを感じさせる見せ方の演出で
    映画館の大画面で見たい作品に仕上げているのです。

    お金をかけなくても十分映画になりうる、ということですが、
    一方「お金をかけてないと思わせない」こともまた重要です。

    日本映画はよく設定を大きくしますが、
    予算が無いので造りとか展開を間引いてしまいます。
    たとえば、大合戦なのに数十人しか兵が居ないなどがよい例で、
    奥がCGで、実際に戦っている兵が少ないなども同じです。
    こうなると画面が安っぽくなってしまいます。

    予算が少ない場合は少ないなりの作り方があります。
    この激突という映画がその答えをだしていると思います。


    テーマ : 映画情報
    ジャンル : 映画

    桐島、部活やめるってよ
  • 映画批評
  • 2015-02-10

  • 今回は日本アカデミー賞作品について書いていきます。
    36回(2012年)日本アカデミー賞最優秀作品

    桐島、部活やめるってよ
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    公開 2012年

    タイトルが面白いです。
    著者が大学在籍中に執筆し、小説すばる新人賞を受賞した
    デビュー作の映画化です。
    内容は学園ドラマで、
    男子バレーボール部のキャプテンだった「桐島」が部活を辞めることで、
    生徒達にいろいろな影響が波紋のように広がっていくストーリーを
    オムニバス形式で見せています。

    オムニバス形式とは、ある出来事について複数の人が
    それぞれのストーリーを並列的に絡ませていく手法です。

    私もプロデューサーとしての立場で、
    オムニバス形式の短編アニメにかかわったことがあります。

    映画の限られた時間の中で見せていくのは難しいのですが、
    意外と表現しやすかった印象があります。
    なぜかと言うと、
    一人のストーリーを追うより数人のストーリーをからめていく方が、
    いろんな場面を組み入れられて展開がしやすいからです。

    面白い手法です。

    さて、批評ですが、
    俳優の演出が自然体な表現なのは良かったと思います。
    さすがに最優秀作品ですから変なカメラや変な演出はなかったです。

    内容的にも、バレー部というメジャーな部と映画部というマイナーな部、
    クラブに熱中している人と帰宅部の人、男子生徒と女子生徒など、
    それぞれの心理がいろいろと絡むところも面白かったです。

    また、この作品にはメインに新人に近い人達が参加しているのも
    好感が持てました。

    東出昌大
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    最近ではNHKのお抱え男優になりましたね。
    朝ドラから「花燃ゆ」にも出ています。

    自然派な演技です。

    この系の俳優は、
    tutui01.png
    筒井道隆です。
    彼にももっと活躍してほしいですね。

    あと、映画部が取り組んでいたゾンビ映画が
    イメージ映像として使われるシーンがあるのですが、
    結構力の入った演出でした。
    これは逆に、高校生レベルで最高と思えるぐらいの映像で
    良かった気がします。
    つまり、もっとダサくしてほしかったです。

    そこに8mmフィルムに魅了されていると語るシーンが出てきますが、
    映画好きの人には良くわかるフレーズです。
    これは万国共通なフレーズですね。

    スーパーエイト
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    公開 2011年

    スティーヴン・スピルバーグがプロデューサーとして参加した映画で、
    子供たちが同じようにゾンビ映画を撮ろうとしたところ
    大事件に巻き込まれるという映画でした。
    彼らも8mmフィルムに魅せれていました。
    題名にもスーパー8mmというフイルム名を付けているのです。

    内容的には別段良くなかったですが、
    最後に流れる子供達が撮った風の映像がダサくて
    逆に良かったのです。

    しかし、ゾンビ映画は万国共通で皆好きですね。

    さて、今まで評価しているところを書いてきましたが、
    やはり根本的な問題に行き着きます。

    これは映画かドラマか、です。
    もちろん、迷わずドラマです。

    確かにこの路線もありなのですが、それは国内で楽しむものにしかならず、
    世界には売れません。

    最後に、映画部の高校生を見てほのぼのはしましたが、
    ここで願うのは、実際に映画を目指している若い人達には
    もっとグローバルを目指してほしいものです。

    テーマ : 映画レビュー
    ジャンル : 映画

    ゴジラ GODZILLA
  • 映画紹介
  • 2015-02-08

  • 今回も昨年話題になった映画について書きたいと思います。
    洋画ですが、

    なぜかというと
    goz01.jpg
    ゴジラだからです。

    公開     2014年
    製作費    約160億円
    興行収入  約530億円

    内容は日本人には突っ込みどころ満載でしたが、
    大昔にゴジラと敵対していた巨大生物が復活し暴れまくるので、
    仕方なくゴジラも参戦してハワイやサンフランシスコがめちゃくちゃになり、
    さあ大変だ!という話です。

    今作のコンセプトは人間の目線で演出している点です。
    確かにその点は良かったと思いますが、
    何が起きているのかさっぱり分かりませんでした。

    一言、「暗すぎ!」です。

    ただ、私達のゴジラに近いデザインになりましたし、
    映像もさすがに160億をかけているだけはあります。
    goz02.jpg

    ハリウッドは変な演出をたまにやります。
    goz05.png
    1998年に公開されたハリウッド版初「GODZILLA」です。
    これは期待外れでした。

    公開時にはちょうどLAに滞在していたのですが、
    街中に緑の文字の「GODZILLA」の看板が溢れていました。
    私達日本人もアメリカ人もかなり期待していたのですが、
    「ゴジラ」ではなく「イグアナ」でした。

    がっかりした記憶があります。

    とにかく私のゴジラは
    goz04.jpg
    この演出です。
    公開は1954年、戦争の記憶がまだ残る東京大空襲の
    イメージで作ったらしいです。

    映像に対する姿勢が違いますね。

    そしてこの「ゴジラ」をアメリカ人ジャーナリストを主人公に再編集した
    「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」(1956)が
    アメリカで3200ものスクリーンで上映されました。
    邦画系では未だ、この記録は破られていません。

    そのお蔭で世界中に「ゴジラ」ファンが居ます。
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    このように歴代ゴジラをまとめている人もいるのですね。
    世界のファンは意外と日本のゴジラを求めているかも
    しれません。

    これは世界に通用する日本映画のヒントになると思います。

    ただ、私がアメリカ社会で気づいたことは
    日本人の主人公では世界に通用する映画は無理だということです。
    しかし、ゴジラなら通用するのです。

    最後に私がゴジラと共によく出来ていると思っている作品は
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    大魔神シリーズです。
    城が崩れるシーンは素晴らしい出来です。

    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    プリプロダクション その4
  • 映像技術
  • 2015-02-01

  • 前の記事でアニマティックの重要性を書きましたが、
    今回はこのシリーズのまとめになります。

    映画で予算のかかる部分は、
    撮影以外に背景などのセット造りがあります。

    これもアニマティックを作れば画面に映らないセットが分かるので、
    その部分を造る必要が無くなります。
    もし、アニマティックを作らなければ、
    セットは
    大目に造らなければなりません。

    スタッフ全員にとっても、
    どのような映像が必要かを事前に知ることは大きなメリットです。
    セッティングや段取りの前準備が出来るので
    当日に素早く対応できます。

    役者にとっても、
    どんな映像が出来るか知らぬまま演技することが無くなります。

    さらに投資者にとっても、
    「3.演技セリフ合わせ」と「4.アニマティック」を確認することで
    リスクを回避する段階的な投資が可能となるのです。

    この技法は大作映画だけでなく、恋愛ドラマ的な映画など
    どんな映画にも適用できます。

    そんな魔法の杖をなぜ日本映画業界は取り入れないのか。

    こころある製作者は何度も提案して来ました。
    しかし日本映画界には今までやってきたことを変えたくないという
    意識で満ち溢れています。


    日本人が効率をよくすることに長けているのは、
    「物づくり」をみれば明らかです。
    それが映画に関してだけは相変わらず感性だけで撮っています。

    日本の得意の分野をアメリカができて日本にできない訳はありません。

    私はプリプロダクションを重視したプロセスを
    構築しなければ日本映画を変えることは無理だと思います。

    投資者もこのプリプロダクションを条件にすれば
    失敗のリスクを減らすことが出来るのです。

    最後にアメリカ映画製作で感心したことがもう一つあります。

    ある映画の実行予算表を見せてもらったことがありました。
    この表が素晴らしくて、例えば一人の予定作業を3日から5日に変更すると
    映画予算
    総額に反映されるようにできていました。

    このような表を作れば、今ならクラウドで投資者もふくめ
    関係者の誰でもが、現在予算はどれぐらい使われているのか、
    どれぐらい赤字になっているのか、しかも何が予算を食っているのか、
    いつでも確認できます。

    そういうのも取り入れれば、映画製作が
    もっと「博打」では無くなり
    健全な製作が出来ると思うのです。

    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    プリプロダクション その3
  • 映像技術
  • 2015-02-01

  • いよいよプリプロダクションの生命線についてです。

    4.アニマティック
    matr01.jpg
    これはマトリックスのアニマティックです。

    絵コンテをもとに、今度は実際に「仮の映像」を作ります。
    基本はCG作業となりますが、人物の話すだけのシーンなどは
    「3.演技セリフ合わせ」の時に撮れた映像を流用します。
    そして映画の長さ(尺)の仮の映像が出来るのです。
    それがアニマティックです。

    私がCG屋だからいうのではありませんが、
    この作業こそ映画の失敗を回避し無駄な予算を使わないための
    論理的な方法だと思います。

    アニマティックの目的は
    ・実際のカメラで撮るアングルを決めること
    ・撮影現場でのカメラの位置と高さ、レンズを決めること
    ・ライトの方向や位置を決めること
    ・役者のセリフや演技(3で撮った)も入れ込むことで
     全部の尺や流れを決めること

    以上が目的なので、CGのクオリティは低くて問題ありません。
    CG作業の予算は出ますが少なくてすみます。

    しかも製作に入る前に重要なチェック機能与えてくれるのです。

    映画製作予算の大部分はこの後から発生するので
    その前に検証できるのは大きいのです。

    このアニマティックは完成する映画をシミュレーションしているので、
    これからの本番製作のガイドとなり、すべてのスタッフはこの映像に
    そって製作したり撮影のセッティングを行うことになります。

    アニマティックをやってない場合は
    ・撮影する現場に行ってからカメラや照明の位置を決める。
     これにはすごく時間がかかります。
    ・実際にカメラを回したり、照明をたいたりしてテストを行う。
     良く無ければ再度位置決めから行う。
    ・やっと役者が出てきて演技指導が入る

    これは非常に無駄です。膨大な予算の浪費です。

    アニマティックは撮影する現場の寸法や役者の身長を考慮した上で
    カメラのレンズが何mmかも決めて作られた映像です。
    したがって現場ではそのデータを再現するだけでよいのです。

    私がアニマティックの重要性を感じたのは下の映画です。
    dh02.jpg
    ダイ・ハード3(1995年)

    このシーンはCGではなく、実際に街の大通り(設定ではニューヨーク)
    で爆発させたカットです。
    撮影の時にはもちろん
    この大通りに一般の車は入れなくなります。
    流石に撮影に協力的なアメリカでも長い時間は許可がでませんでした。
    そこで製作スタッフはCGを使って徹底的にシミュレーションを行い、
    短時間でカメラや照明を設置し、一発勝負の撮影を成功させたのです。

    これがCGを使ったアニマティックの基礎になり、
    映画製作に非常に重要なヒントを与えてくれました。

    正式にCGのアニマティックを使用した作品は1年後に公開された
    「ミッション:インポッシブル」(1996年)だと言われています。

    このアニマティックを徹底的に活用すれば、スケジュールと予算を
    大幅に削減できるのは明らかです。
    しかも最初の段階で映画の善し悪しの検証もできます。


    まとめは次の記事で。


    テーマ : 映画関連ネタ
    ジャンル : 映画

    プロフィール

     野口秀昭

    Author: 野口秀昭
    30年近くCG映像業界に身を
    置き、CM、展博、ゲームなど
    の映像を担当し受賞作品や
    有名タイトルを多数制作

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